恐らく祭囃し編の最後の分割です。
『ひぐらしのなく頃に』を読み進めながら感想を書いていく記事です。
こういった謎解き系は一度読むと新鮮な感想を抱けなくなる不可逆的エンターテイメント。
なので、新鮮な感想を書き残しておこうという試みです。
注意:多分にネタバレ要素を含むので未読の方は絶対に読まないで下さい。
【祭囃し編(7巻~8巻)】
7巻冒頭、入江から治療を受ける詩音は死んだと思っていた悟史の生存を教えられます。
一行は富竹救出のため、発信機を逆手にとって梨花を囮とすることにします。
裏山を熟知した部活メンバーが裏山で囮を、赤坂と葛西が診療所に突入という形です。
また、銃を扱え、悟史の生存を知らされた詩音も診療所に同行することに。
「殺されたって死ぬもんか!」、恋する乙女は強い。
梨花は詩ぃが強く強く信じてきた奇跡だから今この瞬間に叶うと言います。
綿流し編の世界線で信じることができなかった詩音へのこの言葉は深いですね。
一方小此木には野村から電話が。何やらきな臭いですね。
ちなみに小此木は鷹野をお姫様、野村を東京の女王様と称しています。
鷹野は富竹に寝返りを説得しています。
この作戦が終わったら使命を果たした鷹野三四は田無美代子に戻るのかいと富竹。
田無美代子に戻ったら「そのまま死ぬの」と鷹野は言います。
「私が…私が側にいてほしいのは…」最後に富竹に想いを伝える鷹野。
「ねぇ何か言ってよ…。もう私に言うべき事はないっていうの…?お願い…返事をしてジロウさん…お願い…。」
富竹は返事をしませんでした。
梨花発見の報を受けた鷹野はそのまま外へ。今生の別れだと予感する鷹野。
「最後にあなたに言葉がもらえなくて…残念よ…」
何だか…切ないですね…。
裏山で部活メンバーVS山狗!普通だったら子供が敵うわけないですが…。
沙都子の罠が炸裂!どうみても子供が作る規模と威力じゃないヤバい笑
魅音の指揮も敵の動向を見事に読んだ素晴らしいものです。
部活メンバーが注意を引き付けている間、詩音たちは悟史と富竹救出ミッションへ。
中でてんやわんや、窮地では葛西のスラッグ弾が大活躍。
葛西は"散弾銃の辰"と呼ばれ鹿骨にその人ありと恐れられていたみたいです。
入江も薬物のはったりを利かせて詩音を救ったりしますがメイドインヘヴンのくだりが笑
ついに悟史の前に辿り着く詩音。
しかし末期症状の彼を起こしてはならないと入江に言われてしまいます。
目の前で寝ているのに起こして話すことも出来ず、泣き崩れてしまう詩音。
そんな詩音の前で入江は悟史を連れ帰り治療することを誓います。
かつての両親の件で入江は深い悲しみを知っていますからね…。
富竹の救出も完了、一行は番犬部隊と連絡を取るために興宮へ行くことに。
道中は山狗がバリケードを敷いていますが、突破しなければ時間がかかりすぎます。
その頃裏山では部活メンバーが順調に山狗の数を減らしています。
小此木は彼らを1個機甲師団に匹敵、指揮官も天才級と評価しています。
部活メンバー強すぎる。
羽入も無線を使って山の神様を装いすさまじい迫力の脅しをかけています。
山狗の戦意もどんどん削られていきます。
それでも無茶をさせようとする鷹野。まさに部下を死地に突き落とす背広将校の様相。
診療所襲撃の報を受けた小此木は富竹奪還を悟り、興宮への道の封鎖線へ連絡。
封鎖戦で最後の勝負をかけることに。
赤坂たちの車に向けられるRPG-7。しかし赤坂たちは止まりません。
打たれる直前、射手に弾丸が!詩音の観測の下、葛西が狙撃したのです!
二人のベテランな狙撃援護により、赤坂たちは封鎖戦を突破。
追ってきたワゴン車には富竹が車内から応戦します。
富竹は事故で事務屋に移っただけで、教官時代は不正規戦部隊の射撃教官でした。
ついに完全に突破した赤坂たち。
番犬部隊と連絡を取り、入江機関の即時制圧と山狗への武装解除命令がでます。
そして鷹野と小此木の逮捕命令もでます。複雑な感情の富竹です。
「私達は勝ったんだ…」と赤坂と富竹。
赤坂は梨花ちゃんが待っている、まだ約束を果たし終えていないと、富竹もまだ用事があると言い、「さあ行こう、雛見沢へ」。
といったところで7巻終了!
クライマックスに向けての怒涛のスピード感に圧倒されっぱなしでした。
また、本巻では鷹野の心も描かれていました。
富竹の声を切実に望む鷹野の姿は、何だか悪役には見えない悲壮感がありました…。
いよいよ次の8巻が最後です。
後日談や番外編を除けば『ひぐらし』シリーズの最後です。
一体どんな終わり方をするのか非常に楽しみです。
というわけでいざ8巻へ。
戦力も8割を切った山狗、それでも鷹野は進軍を止めません。
小此木も相手の指揮官の顔を拝むまでは決着がつかないと山を登ります。
そこには隠れずに待ち迎えた部活メンバーの姿が。
梨花捕縛を命じる鷹野を制し、指揮官を尋ねる小此木。
名乗り上げた魅音に、子供だったのかと驚愕すると同時に敬意を表する小此木。
鷹野の命令を無視して武器を捨て、指揮官同士の1対1を望む小此木。
負けは決まったが指揮官ゆえに降伏するわけにはいかない彼なりのけじめ。
我が身を犠牲にしてしか敗軍の将は禊げないのでしょう。
アドバイスをしつつ魅音に体術をかけられる小此木。
戦略、戦術、戦闘の三拍子揃った魅音はSASでもデルタでも最高の人材になれると小此木。
魅音は隊長なんて興味ない、部長でいいと返します。
小此木「英国情報部辺りってとこか、ふ…妥当だな」
魅音「はぁ?だめだめなってないね!」
小此木「ならどこだ!?お前ほどのヤツが何の部長を望むっていうんだ!」
魅音「私がやりたい部長はたったひとつ!雛見沢分校の我が部の部長だけさッ!!」
小此木「な…何…?」
魅音「罰ゲームのない戦いなんてゴメンだね。それに我が部にはどこにも負けない精鋭達がいる。口先の魔術師前原圭一!かぁいいモードの竜宮レナ!トラップ使いの沙都子に、萌え落としの梨花ちゃん!!そして期待の新人古手羽入!!これだけの精鋭が揃ってるんだ!!これと比べりゃ世界のどこへ行こうと退屈だねッ!!」
小此木「勝てねぇ…。こんなヤツが隊長だったんじゃ勝てるわきゃねぇやな…。」
小此木は明るく苦笑して負けを認めます。
次の一撃で殺すから殺しに来いよと、戦いの最後を宣言する小此木。
突っ込む小此木を、触ったようにすら見せずに投げ飛ばす魅音。
そこにちょうど到着する番犬部隊のヘリ。小此木は鷹野を連れてその場を逃走します。
彼らには部活のように負けをチャラにする罰ゲームがないんだねと複雑な魅音。
その場に赤坂も合流し、悟史の無事を伝えられる梨花。
完治していない悟史を沙都子に会わせることはできないが、きっと古江が治してくれる。
梨花(これで私達はやっと昭和58年の夏を越えることが出来る。長い間閉じ込められていた運命の籠の中から抜け出せる。これが私達がずっとずっと待ち焦がれていたハッピーエンド。)
梨花「…ほら、感想を聞かせなさいよ。ねぇ羽入…。」
振り返ると、そこにはなぜか羽入の姿はありませんでした。
その頃、鷹野は小此木を問いただします。
小此木は本当の戦闘部隊である番犬部隊に防諜部隊の山狗は勝てない、富竹は既に奪還されて企ては東京にバレた、我々の負けだと鷹野に伝えます。
現実を受け止められない鷹野に対して小此木はさらに言います。
研究の真偽などどうでもよく、ただ政治的アクションに使えるかしか興味がなかったと。
鷹野のスクラップ張に大勢が賭け、そして負けたと。
鷹野のスクラップ張を足で踏みつける小此木。
1億円も支払ったクライアントの私を裏切るのは許されないと憤る鷹野に残酷な真実を突きつける小此木。
ずっと前から、山狗は東京の野村に買われて鷹野は飼い主ではなくなっていたのです。
野村の暗号名は「郭公」、鷹野の暗号名は「雛」。
郭公はよその鳥の巣に卵を産み付け、孵った郭公は元々の巣の雛を突き落とし乗っ取る。
東京のクライアントも山狗もまだ鷹野に期待している役割があるという小此木。
小此木は拳銃を目の前に落とし、鷹野に自分の頭をぶち抜いてくれと言います。
自殺用の銃は小此木なりの気遣いであり、投降を説得するも頑なに拒否し抵抗、銃撃戦になりやむなく射殺というのが本当の筋書きだそうです。
全て東京の連中が書いたシナリオ通りであり、人生の全てが茶番だったと涙する鷹野。
鷹野は抵抗して山中に逃げていきます。
ヘリに追われ、雨に濡れ、ボロボロになりながら孤独に逃走する鷹野。
拳銃を片手に絶望する鷹野。
鷹野(私は…死ぬしかないんだ…死ぬ事でしか全てを清算出来ない。あの日へ帰れない…。…私にはたくさん罪がある…分かっている…とても償いきれないくらい…。)
鷹野「でもそれは…私が死ななくちゃ償えないの…?嫌…嫌だよお祖父ちゃん…。嫌だ…死にたくない…死にたくないよぉ…。」
そこに現れる羽入。
羽入「人の子よ、数々の試練を潜りそれでもなお神の座を求めるか。」
鷹野「…誰かと思えば…久しぶりね…。あの時境内で宣戦布告をして以来になるわね…。このゲームは私の負けよ、私はもう終わり…。人の身の分際で神に挑戦した哀れな女の末路がこれよ…神の座なんてもう…無理じゃない…。」
羽入「人の子よ、聞け。今こそ神になる道を示そう。」
鷹野「え…。」
羽入「そなたの右手に持つ鉄の火で己が生に別れを告げるがいい。」
鷹野「な…。」
羽入「神の座に肉の器は不要。人にその姿を認められようなどと思ってはならぬ。」
鷹野「これで私の頭を打ち抜けっていうの…。そんな簡単な事で私は神になれるの…?なら今までの私は何だったの?今まで何を積み上げてきたの…?」
羽入「お前は大勢の人間の罪を背負った。大勢の罪を己を生け贄に捧げることで禊ぐのだ。その勇気は讃えられ神の座の末席を許されるであろう。」
鷹野「な…何よ…何よそれ…。私にトカゲの尻尾を引き受けて死ねというの!?そんなの絶対に嫌ッ!!」
羽入「何故に嫌か。遥か以前生け贄として我が娘に討たれたように、人の世に和を求めるためには常に一つの穢れに一つの生け贄がいる。そなたの望む未来に一人の少女を生け贄に求めたのもそれを理解していたからではなかったのか。」
鷹野「な、何の事よわからないわ!私の知らない話はやめて!!」
羽入「…それがわからぬなら所詮は人の身。神の座を求めた身の程知らずを悔いよ。」
鷹野「…悔いるわ…そんな神さまになんかなりたくない…。私は人間でよかった…ただ生きてもいいよって誰かに許してもらいたかっただけなのよ。それなのに何で…こんな事に…。」
羽入「…なればこの度の人の世の穢れを如何にして祓うのか。如何にして代価を祓うのか。」
鷹野「何でよ!何で誰かが責任を取らされなくちゃならないのよ!!お父さんやお母さんやお祖父ちゃんと生きてきた日々にはそんなのなかったもん。みんながみんな幸せだったのに…誰もジョーカーなんか押し付けなかったのに…。どうして私はその世界から零れてしまったの…?」
鷹野「わかってた…うっすらと気付いてた…。何か大切なものを間違えて…でもそれを認めたくなくて、取り返しがつかないところにまできて初めて後悔した。これが私の罪に対する報いなのね…。」
羽入「人の世はそなたに罪の禊を求めるだろう。それが人の世の穢れの祓い方。なれど…我は人にあらず。人の罪を許す存在。人を超える存在にして欠けたる和を埋める存在。田無美代子、そなたを許そう。生け贄を求めて穢れを祓うは人の世の理にあらず。鬼の理なり。その理を断ち切るために我は神の座に座った。それは専念を超える苦痛。…私はこの座を降りたかった。神が和を取り持たなくてもみんなで仲良くやっていける世界を見たかった。そして…千年の時の中で、私はようやくそのカケラを見た。さあ人の子よ。そなたの罪を我が名の下に許そう――。」
手を差し伸べる羽入。
そこに羽入を探して駆けつける仲間たち。
はっ…と我に返った鷹野の前にはいつの間にか巫女服ではなくなり私服の羽入が。
鷹野は拳銃を片手に部活メンバーを脅します。
羽入がせっかく手を差し伸べてくれたのになんて愚かなのか。
魅音を前に出させる鷹野。魅音は部活メンバーを庇い、鷹野に立ちはだかります。
鷹野「あなた達よくゲームはするわよね…トランプのババ抜きはやる?」
魅音「やらないね。うちはジジ抜きばっかだよ。」
鷹野「同じようなルールよ…人の世の罪はトランプのババ抜きと同じ。誰もが1枚のババを互いに押し付けあう。それは一人の敗者と生け贄を決めるゲーム。私はそのババを引いた。そのカードをもう渡す相手がいない。だからその腹いせにあなたを撃つの。不条理な人の世らしくね。」
羽入(勇敢なる魅音、あなたの勇気はそれで十分です。)
羽入「人の世のババ抜きが必ず人に押し付けられなければならないものならば…それを引き受けるのが私の役目。」
羽入が魅音と鷹野な間に割って立ちます。
羽入「梨花、この世界はすごく楽しかったです。私も部活メンバーに加われてよかった。見ているだけじゃなく加わる部活は本当に楽しかった。有り難うもう十分に楽しんだ。神の身には過ぎたくらいに幸せだった。」
梨花「羽入…!」
羽入「先ほど告げたように我はそなたを許す。さぁ撃て人の子よ、人の世の押し付けずには済まぬ罪を放て。それを我が受け止めてやる。」
鷹野「く…くすくす…あんたが…引き受けてくれるっていうの…?そう…わかったわ…わかったわかったわかった。なら…お前が死ねえぇぇぇぇぇぇッ!!!」
凶弾が放たれます。
羽入は拳銃を神通力で止めて見せますが、鷹野の「バケモノ!!」という言葉に動揺して銃弾が神通力の壁を破ってしまいます。
羽入の胸の直前に凶弾が迫り、止まる世界。
圭一(俺達は…俺達はこの光景を知っている…ありえない記憶で知っている。時が止まったこの世界で俺達は身動きが出来ず…あの弾丸を止められない!)
鷹野「くすくすくす。あっはっはっ!あなたは死ぬ、絶対死ぬ!好きなだけ走馬燈をご覧なさい。それが終わったら胸板をブチ抜かれてのたうちまわって死になさい!」
羽入「…そんな事は覚悟の上です。」
羽入(これで…全て丸く収まる。初めてから存在しなかった僕が再び舞台を降り、舞台の上には本来の出演者が全員無事なまま残る。あの時と同じ…桜花にこの身を討たせた時と同じ…。これが最善なんだ…さよなら大好きだった人達…)
そこにスッ…と梨花が近寄り、銃弾を指でつまみます。
羽入「な…どうして…僕ですら動けないのに…人の世の梨花が動けるのですか…」
梨花「それを驚くのはおかしいわ。あんたと学んできたじゃない。みんなが信じれば…みんなが願えば奇跡は起こるって事。」
羽入「…!」
梨花「ここにいる全員が思っている。誰かにこの弾が当たるくらいならその弾をどうか自分にと。そして私はさらにその上を願う。この弾が誰にも当たらない事を。誰にも当たらず誰も傷つかない世界。誰にも当てず鷹野も傷つかない世界。」
ス…と弾を羽入の胸の前から外す梨花。
梨花「私オヤシロさまの生まれ変わりだしね。最後にこの程度の奇跡は使わせて。」
羽入「梨花…」
梨花「鷹野も羽入も人の話を聞かないヤツだって事もわかったわ。魅音の話を聞いてた?私達はババ抜きなんてやらないわ。ジジ抜きしかやらない。ババ抜きは調和の取れた52枚のトランプにジョーカーという不調和を1枚混ぜてそれを押し付けあう。でもジジ抜きは元々調和のとれた52枚の世界から1枚を抜いて余った不調和のカケラを押し付けあう。これは同じようで全然違うゲームなのよ。同じ1枚のカードを押し付けあうゲームだけど押し付けあうものの意味があまりにも違う。ジジ抜きは欠けた1枚のカードが足されたら敗者の出ないゲームになる。その欠けたカードが羽入あなたよ。誰かに罪を押し付けあわなければ終わらぬ世界に羽入という欠けたカードが参加する。そうすればもうこの世界に敗者は出ない。敗者なんかこの世界にいらない。これが古手梨花が奇跡を求めた千年の旅の最後に辿り着いた答えよ。」
羽入「…梨花…」
そう…答えは、魅音の部活の一番最初のゲームにもう込められていたのだ。カードの欠けたトランプでゲームをするから敗者が必ず出るのだ。信じ合い、助け合う事で欠けたカードを補えたなら…それは52枚の完全なるトランプ。敗者の出ない…完成された世界。仲間外れが出ない完成された世界。誰一人輪の外で指をくわえてなくていい誰一人罪を背負い込んで泣かなくていい、全員が手を取り合い罪を赦せる世界。人が生きる以上垢が湧くように罪も湧く。大切なのは罪が湧かせない事じゃない。罪を赦す事なのだ。罪を受け容れよう。そしてみんなで赦そう。それが、古手梨花が見つけて至った完成された世界。それは、一人を敗者にしなくてはならない人の世の罪からの解放。梨花は人の身でありながら、至った。気の遠くなる時間の果てに…ついに至った。
羽入「もしそんな世界があるのなら僕はこの世界にいたい…。」
羽入の手をとったのは梨花にそっくりな巫女服の女の子。
桜花「母上お帰りなさいませ」
動き出す現実世界。弾は消えました。
番犬部隊が駆け付け、鷹野を連行しようとしたところに、富竹が来ます。
富竹「待て!調査部の富竹二尉だ!彼女は調査部が保護する!!」
富竹は彼女の沢山の掻きむしった痕を指摘し雛見沢症候群の高いレベルの発症が疑われると主張します。
富竹「予防薬は100%の効果を保証するものではない。彼女が末期症状だとしたら…今回の事件が彼女の意志に基づくものなのか、末期発症による妄想・錯乱を誰かに利用されたのか慎重に判断する必要がある。全ては…彼女の罪なのか彼女の病んだ病の罪なのか!それはまだ誰にも断言出来ない!」
富竹は落ちていたスクラップ張を拾い、鷹野に差し出します。
富竹「遅くなったね…君を迎えに来たよ」
鷹野「ジロウさん…」
鷹野はスクラップ張を受け取ろうとしますが、涙して手を引っ込めます。
鷹野「…だめ…私いっぱい罪にまみれた…もう生きてはいけない…死ななきゃいけない…じゃなきゃ私は自分の罪の重さで…」
富竹「そうだね…君の罪はひょっとすると軽いものじゃないかもしれない。でも大丈夫。…僕が一緒だから。」
笑顔になり、富竹と抱き合う鷹野。
まさか富竹をかっこいいと思う日が来るなんて!
富竹「一緒に償おう。そして僕と一緒に田無美代子を取り戻そう。それまで僕は決して君の側を離れない。」
鷹野「…わ、私は生きていていいの…?みんなお前が死ねば丸く収まるって私に言うよ…それでもジロウさんは私に生きていてもいいと言うの…?」
富竹「ああ、僕が君を許すよ。だから生きよう。死ぬ事は罪の償いにはならない。生きて償い世界に許しを乞おう。そしてやり直すんだ。そうしたらきっと思い出せる。君が本当はどんな人で…どんな笑顔を浮かべていたかをね…。」
連行される鷹野。
羽入(5時から綿流しのお祭り。もうすぐひぐらしもなきだすだろう。)
羽入「終わったのですね…これで…」
頷く梨花。
羽入(綿流しの日、暑い6月ひぐらしのなく季節…。全て終わったのに僕はまだここにいる…)
羽入「梨花、これで十分です。バケモノと蔑まれかつてこの世を離れた僕の身には十分すぎる…。」
梨花は羽入に先ほどの銃弾を差し出します。
梨花「そう、これは奇跡が起こった事の証。あなたがここにいていい証。」
羽入「…」
梨花「奇跡は本当に起きたの。ひぐらしのなく頃にね。」
羽入「梨花…」
村からは祭囃しのテストがスピーカーで流れています。
お祭りは見るものじゃなくて加わるもの。
二人が来るのを待つ部活メンバー。
梨花「みんなで一緒に行こうね、綿流しのお祭り。」
羽入「うん」
お祭りを楽しむ部活メンバーが描かれています。
以下、羽入によるエピローグです。
思えば彼らはあまりに元気だった。これほどに長い一日を経験してさらに祭りにまで出ようというのだから。でも今日の祭りだけは特別なもの。オヤシロさまの祟りなどという呪いが解かれ、ダム戦争が終わって以来雛見沢が初めて迎える――惨劇なき綿流しの夜。
そう、惨劇なんてなかった――。
村人達は日中に一時電話の普通があったことを知っていたが、気付いたら直っていたので大して気にしなかった。
自衛隊のヘリコプターが裏山の方で騒がしくしていたが噂では訓練の山と間違えて迷い込んでしまったらしい。噂では何と入江診療所にまで降りてきたとか。「頑張れ国防の若者達」と老人達は笑っていた。
村境の路肩には車のものと思われるガラス片が大量に飛び散っていたが、こんな見晴らしのいい道路でも交通事故は起こる。よくある風景だ。
お祭りの開催を知らせる花火が一発余計に聞こえ花火業者達は不思議がったが、「花火が面白そうだったのでオヤシロさまも鳴らしたくなったのですよ」と梨花が言ったらそれで納得してしまった。
今夜は一年に一度のそして最大のお祭り、綿流しの夜。堅苦しい事は抜きにして村人達は今夜を思い切り楽しむのだった。
部活メンバーは相変わらず今年も絶好調だった。どのくらい絶好調だったかと言えば、…まぁ全員本部テントへ連れていかれて村長さんにこってり油を絞られたくらいと言えばわかるだろうか。
村人達にとって見ればいつも通りの綿流しの夜だったろう。でも彼らは知らない。
それを勝ち取るために少女達が気の遠くなるほどの時間、数多の世界で戦っていた事を…。
そうだ、大きな変化があった。
梨花「ボクは夏になったらプールに行きたいのです!」
古手梨花は初めて昭和58年6月以降の予定を立てたのだ。
梨花「6月が過ぎればあっという間に夏が来るのです。夏休みが待ち遠しいのです!プールに行きたいし天体観測もしたいし夏休み中は学校で肝試し大会もやりましょうです!それからそれから…!」
沙都子「梨花朝からはしゃぎすぎですわよ!」
百年を経て初めて得る夏休みなのだから心が躍るのも当たり前。古手梨花の前に広がるのは無限の未来。無限の可能性のある世界から一つしか選べないからこそ輝く、素晴らしい世界。
魅音「この夏は遊っそぶよ~!プールに行って肝だめし大会やってそれからそれから…」
沙都子「梨花と同じ事を言っていますわ」
詩音「お姉は夏休みが終わったら勉強地獄が待っているんです」
圭一「そんな時期からの勉強で間にあうのかよ?」
梨花「魅音は現代の名将なのです。とんでもない方法で志望校に合格してみせそうなのですよ」
詩音「…それが犯罪でない事を祈りたいです」
園崎魅音は最年長者として一足先に進学を迎える。最後の夏休みを満喫すべく遊び倒す予定をぎっしり考えているらしい。
魅音「そうだ圭ちゃん次の部長の件は考えてくれた?おじさんが卒業した後は圭ちゃんに部活の部長を任せたいと思ってるんだからね~?」
圭一「そんなとんでもねーぜ!俺が好きなのは魅音の部活なんだから!」
魅音「ふえっ…?」
そこで止めておけばいいものを魅音の「部活」「部活」と何度も連呼していたら魅音にむくれられた。まあ圭一は鈍感だから圭一なのだ。だから今日も彼を中心に賑やかなのだ。今や彼の名は興宮にも馳せ口先の魔術師はますます絶好調だという。
竜宮レナもまたますます元気になっていく。
圭一「レナ待て誘拐は犯罪だぞ~!」
レナ「はううぅぅぅ羽入ちゃんもおっ持ち帰りいいい!」
圭一「あんなレナでも普段は後輩の面倒見もいいし前よりしっかりしてきたんだよなぁ…」
男の子「クラスのお母さんみたいですよね」
圭一「へへっレナがクラスのお母さんか。じゃあ俺はクラスのお父さんでいくぜ!」
レナ「はぅ…圭一くん恥ずかしいよ…」
沙都子「をっほっほ!お二人とも相変わらずですわねえ!」
梨花「沙都子、今日の部活の後はどうするのですか?勿論裏山へ行きますわ。山狗との裏山戦でトラップをほとんど使い切ってしまいましたもの。更に強化して次は番犬と戦ってみたいですわね!」
ますます元気が止まらなくなっていく沙都子は最近料理の腕がだいぶ上がった。
羽入「沙都子は筋がいいのです。真面目に料理を覚えようとしてくれるのです!」
沙都子「羽入さんのご指導がお上手だからです!」
大好物だった唐揚げで兄を迎えてあげるのが夢のようだった。私だけが知っている。彼女の夢は遠くない内に叶う事を。でも今は沙都子の兄北条悟史に変化はない。変化があったといえば園崎詩音の方か。彼女が休みの度に診療所を訪れるようになったからだ。魅音はそれを怪しげな豊胸手術に加担しているのだと冷やかすが、詩音はにこにこと上機嫌に笑うのみで答えようとはしなかった。
詩音「沙都子~!あなたのねーねーですよ~!」
そしてこれまで以上に沙都子を甘やかすようになり、ことあるごとに沙都子に「ねーねー」と呼ばせようとしているらしい。
入江京介は相変わらず大人の落ち着きとメイドの伝道師の二足のわらじを履いている。実は一度入江診療所が閉鎖になるという話が出た。でも彼を敬愛する村中の人々が嘆願しその話は流れたという。彼は本来村の人間ではなかったかもしれない。でも今は村で最も積極的に貢献する若者の一人として認められている。雛見沢症候群に対しても極めて積極的に研究を進めている。後の話になるが彼は脳が及ぼす影響について先進的な論文を発表し学会を驚かせる。憎むべきは人か罪かを考えさせられるとても意義深いものであった。そしてその論文の引用元には故高野一二三と鷹野三四の名が含まれていたという…。
富竹ジロウは相変わらず季節の度に雛見沢を訪れている。でも以前に比べると村の中で見掛けない。そしてその連れの鷹野三四はあの日以来姿を見せない。どこに行ってしまったのか誰にもわからないが、富竹の表情を見る限り心配はなさそうだった。いつかまたひょっこりと帰ってきて階段をねっちり聞かせて大いに怖がらせるのだろう。
赤坂衛は彼のエピソードがとても笑える。何と奥さんと娘さんが赤坂に内緒で雛見沢に来ており綿流しの祭りの会場で偶然を装って再開したのだ。そこで梨花が「パパ~☆」などと呼ぶものだから…
雪絵「衛さん…どういう事…?まさか…隠し子…?」ギリギリギリ
赤坂「ごごご、誤解だ、雪絵…!!」
でもご家族も雛見沢を気に入ってくれた。梨花と赤坂の娘の美雪もとても仲良くなれたようでまるで姉妹のようだった…。
大石蔵人は一度は醒めた麻雀熱が再発。しかもその卓にどういうわけか園崎茜が加わっているらしい。物騒な組み合わせに雀荘の前に機動隊が出動しそうになったとかならないとか。最近は彼の表情が非常に穏やかになったと署内でも評判だ。長年のわだかまりが解けたからだろう。彼は定年を迎えたら北海道に引っ越す予定だが、夏が来る度に帰って来ようなんて考えている。今や第二の人生は広大に開かれているのだった。
葛西辰由は他の大勢と比べると一番変化がなかった。一部の人間にとって後の人生に対する心構えさえ変えかねない大事件も葛西の中では所詮武勇伝の一つであって、「まぁ上の中くらいの事件でした」というのだから恐ろしい。あと往年の片鱗を覗かせてしまった事を後悔しているらしく、詩音「葛西また凄んでよー!」と言われても、知らぬ存ぜぬで通しているらしい。それも彼らしかった。
最後に私を語っておこう。古手羽入は今日も元気だ。罰ゲーム常連から抜け出しつつあり、かつて前原圭一に与えられていたダークホースの称号は今や羽入に与えられていた。
圭一「素直にひっかかってくれた羽入はどこにいっちまったんだ!?」
魅音「素直だからこそ我が部のルールののみ込みが早いんだよねぇ!」
羽入「逞しく狡猾に!じゃないと部活じゃ生きていけないのです!」
人の世で人として生きる逞しさを部活を通じて今日も学んでいる。
そして今でも思い出す。あの日の事を…。昭和58年6月19日日曜日。この千年で一番長かった一日の夜…。
羽入「あうあう当たらないのです!」
射的ゲームをやった。あんなに当たらないとは思わなかった。
たこ焼きの早食いをやった。たこが入ってないけどおいしかった。
カキ氷の早食いをやった。もっとゆっくり食べればおいしかった。
リンゴ飴を初めて買った…みんなにかじられて穴だらけ。でも美味しかった。
楽しかった。初めて加わるお祭りがこんなに楽しいものだったなんて知らなかった。
圭一「梨花ちゃん頑張れ~!」
沙都子「梨花ちゃましっかり!」
羽入(これまではあの祭壇で奉納演舞を眺めてた。ずっと一人で…。)
圭一「羽入潰されるなよ!」
レナ「羽入ちゃんしっかり梨花ちゃんを応援するよ~!」
羽入(でも今日は違う)
羽入「梨花ぁあぁファイトなのですー!!」
部活メンバー「梨花ちゃーん!頑張れー!」
羽入(みんなに交じってぎゅうぎゅうになりながら見る奉納演舞。それは、私に捧げられてきた千年の演舞の中で一番…嬉しい…)
――夜――
レナ「はい羽入ちゃんの綿だよ。やり方は分かる?」
羽入「わかりますのです。こうしてポンポンしてから流すのですよ。」
私達は罪を沢に流す。それは綿に罪を押し付けて流すという意味ではなく、自分で自分の罪を流して赦すという自らに課す贖罪の方法。そして赦し合い助け合い人の世の世界が築かれていく。罪の洗い流される世界へ続いていく…。ここは全てのカケラが集まった完成された世界。これ以上ない理想の世界。まだこれ以上何をあなたは望む?古手羽入はまだ望む。だって、もっともっと、私達は望んだ数だけ、幸せになれるから。それは遠い未来の事じゃない、ちょっとすぐ先の未来。幸せになれるよ――ひぐらしのなく頃に。
誰だって幸せになる権利がある。難しいのはその享受。
誰だって幸せになる権利がある。難しいのはその履行。
私だって幸せになる権利がある。難しいのはその妥協。
だってこれからもっともっと幸せになるんだもの。これくらいじゃ妥協なんてしないんだから。
私たちは、これまでの幸せを全部取り戻すよ。
私は百年分を。
あなたは千年分を、ね。
Frederica Bernkastel
ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編 完。
ちなみにこの後に、おまけとして、野村作成の入江機関クーデーター事件報告書案と、カケラの海のとある世界のお話「お子様ランチの旗」が。
大人梨花(ベルンカステル?)と話をした田無美代子が、両親と一緒にデパートに。
たまたま電車には何も起こらず、20本目の旗を手に入れた田無美代子。
美代子「電車は怖かったけど、デパートに行って良かったなぁ…。苦労して20本旗を集めたの。20本集めたらきっと幸せになれるって願かけをしたの。きっときっと素敵な幸せが訪れる。素敵な世界が訪れるって」
満面の笑顔の美代子。
大人梨花「いいんじゃない?こういうのも。奇跡に前借りがあったって。」
―――というわけで、『ひぐらし』、読了です!
最後の方は鷹野がひたすらに可哀想なことになっていました。
鷹野の本音が赤裸々に語られて、彼女も彼女なりに苦しんでいたのだなと。
そんな鷹野を赦す羽入の包容力。天使かな?
そして、一緒にやり直そうと鷹野を受け入れた富竹。
鷹野にも救いが与えられたという意味で、真のハッピーエンドと言えましょう。
個人的には、ジジ抜きとババ抜きのたとえの部分が面白かったです。
部活の最初のゲームに『ひぐらし』の世界の"答え"が詰まっていたというのは鳥肌もの。
『ひぐらし』全体を通しての感想は、作者の発想・構成力に畏怖を覚えました。
当初こそは恐怖・凄惨な描写や結末が目立っていました。
しかしそれらを乗り越えた読者だからこそ最後の感動に立ち会えるのだと思います。
梨花と羽入のように、何度も失敗した世界を繰り返してトゥルーエンドに辿り着く。
ある意味で読者と梨花、羽入は同じ立ち位置にいたのだと思います。
ちなみに、ブログの日付を見ると、読みだしたのが2016年の9月でした。
なんと、ちょうど1年をかけて読んでいたわけですね!
以前記事にも書きましたが、『ひぐらし』が世に出て、大ブームを起こしてから長らく時を経ているのに、示し合わせたように友人2人も同時期に読みだしていました。
また、SNSやイベント、動画サイトでもたびたび『ひぐらし』の名前を目にします。
何年経ってもしばしばこの作品が話題に上るのは、この作品が非常に素晴らしいものであるからに他ならないからでしょう。
素晴らしい、というありきたりな表現になってしまいますが、本当に深い作品だと思います!
個人的マンガランキング堂々の1位に入りました笑
ちなみに小説ランキング1位は空の境界、ゲームランキング1位はSTEINS;GATE、アニメランキング1位はコードギアスです笑
今までは『ひぐらし』を薦められる立場でしたが、これからは薦める人になろうと思います!
怖かったり凄惨な描写こそあれど、是非最後の感動を多くの人に味わって頂きたい!
長らくなりましたが、ひとまずこれで『ひぐらし』の感想記事は終了です。
もし読んでいただけた人がいるのならお付き合い感謝いたします。
後日談の「賽殺し編」もいずれ読みたいと思っていますが、また多忙になるので先になりそうです。
もしかしたら「賽殺し編」や「外伝」のプチ感想記事も書くかもしれません。
それでは、ひとまずさようならです!
『ひぐらしのなく頃に』を読み進めながら感想を書いていく記事です。
こういった謎解き系は一度読むと新鮮な感想を抱けなくなる不可逆的エンターテイメント。
なので、新鮮な感想を書き残しておこうという試みです。
注意:多分にネタバレ要素を含むので未読の方は絶対に読まないで下さい。
出題編の私的推理(鬼隠し編、綿流し編、祟殺し編、暇潰し編)
→ http://kirisamemagic.diarynote.jp/201609240526322467/
解答編のプチ感想①(目明し編、罪滅し編)
→ http://kirisamemagic.diarynote.jp/201610010535168059/
解答編のあらすじ・プチ感想②(皆殺し編)
→ http://kirisamemagic.diarynote.jp/201702110030195360/
解答編のあらすじ・プチ感想③(祭囃し編・前編)
→ http://kirisamemagic.diarynote.jp/201708272145107238/
解答編のあらすじ・プチ感想④(祭囃し編・中編)
→ http://kirisamemagic.diarynote.jp/201709050053146275/
解答編のあらすじ・プチ感想⑤(祭囃し編・後編)
→ ここです。
【祭囃し編(7巻~8巻)】
「祭囃し編」について 誰かが悪役にならないと…? 原作・監修:竜騎士07
こんにちは、竜騎士07です。
「ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編」7巻。如何でしたでしょうか?
今回のお話は、謎多き女性「鷹野」の想いの核心に迫ろうとしています。鷹野は、「ひぐらし」の登場人物の中でも数少ない大人の女性です。彼女は自分の、そして祖父の研究の正当性を示す為に、梨花を、雛見沢全体を手にかけようとします。もちろんそれは、梨花たちからしてみれば、とても恐ろしい事であり、憎むべき敵になります。鷹野が悪役になってくれたからこそ…物語は終わりへと近づきます。
誰かが悪役にならないと終われないのでしょうか?誰かを敵にしないと、物語は解決しないのでしょうか?誰とも争う事がなく、誰も敵にならない。そんなカケラを探すのは、とても困難な事かもしれません。しかし、ここまで「ひぐらし」の世界について来てくださった貴方なら大丈夫。どうか、そのカケラを探してみてはいただけませんか?あなたは、いつでも魔女の一歩を踏み出す事ができます。
推薦人は私。
それでは、さらに物語のクライマックスになるであろう、次巻でお会い出来たら幸いです。
「祭囃し編」について これが、私の願いです。 原作・監修:竜騎士07
こんにちは、竜騎士07です。
今巻でついに「祭囃し編」が完結となりました。それはつまり、この長い長いカケラの旅の終わりを表します。今までこの長き物語の旅路を共に歩んでくださった皆様、本当に本当に有難うございました。「ひぐらし」「ひぐらし解」のコミックスのあとがきを書くのもこれで最後かと思うと大変感慨深いです。
物語は綿流しまでのたった一週間でしたが、この「祭囃し編」の一週間は、彼らにとって濃密な、本当の最後の一週間でした。梨花たちにとっても、そして、鷹野三四にとっても。貴方にとって、この「ひぐらし」の世界は如何だったでしょうか?ご存知の通り、梨花と羽入、そして知覚してはいませんが、部活メンバー、雛見沢の人々は何度も何度もこの世界を繰り返しているわけです。それは酷く辛く途方もない世界です。しかし、今を生きる私たちは、繰り返すことがない代わりに、一度しかない人生をどう生きるかを試されているのかも知れません。数多の世界で、圭一たちは失敗を繰り返してきました。そしてこの「祭囃し編」で、はじめて正しいといえるゴールに辿り着きました。でも、その数多の世界を知っている読者の皆さんには、彼らが繰り返してきた悲劇、後悔をどうか忘れないでいて欲しいと思います。そして、今を生きる皆さんに、普通に笑ってご飯を食べて恋して…、そんな当たり前の奇跡を、忘れないでいて欲しい。これが、私の願いです。
さて、梨花と羽入にとって、初めて昭和58年の6月が終わりを告げ、永い永い旅は一つの終着へ辿り着きました。でも、『ひぐらしのなく頃に』の世界は、「賽殺し編」へともう少し続きます。どうか、引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。
7巻冒頭、入江から治療を受ける詩音は死んだと思っていた悟史の生存を教えられます。
一行は富竹救出のため、発信機を逆手にとって梨花を囮とすることにします。
裏山を熟知した部活メンバーが裏山で囮を、赤坂と葛西が診療所に突入という形です。
また、銃を扱え、悟史の生存を知らされた詩音も診療所に同行することに。
「殺されたって死ぬもんか!」、恋する乙女は強い。
梨花は詩ぃが強く強く信じてきた奇跡だから今この瞬間に叶うと言います。
綿流し編の世界線で信じることができなかった詩音へのこの言葉は深いですね。
一方小此木には野村から電話が。何やらきな臭いですね。
ちなみに小此木は鷹野をお姫様、野村を東京の女王様と称しています。
鷹野は富竹に寝返りを説得しています。
この作戦が終わったら使命を果たした鷹野三四は田無美代子に戻るのかいと富竹。
田無美代子に戻ったら「そのまま死ぬの」と鷹野は言います。
「私が…私が側にいてほしいのは…」最後に富竹に想いを伝える鷹野。
「ねぇ何か言ってよ…。もう私に言うべき事はないっていうの…?お願い…返事をしてジロウさん…お願い…。」
富竹は返事をしませんでした。
梨花発見の報を受けた鷹野はそのまま外へ。今生の別れだと予感する鷹野。
「最後にあなたに言葉がもらえなくて…残念よ…」
何だか…切ないですね…。
裏山で部活メンバーVS山狗!普通だったら子供が敵うわけないですが…。
沙都子の罠が炸裂!どうみても子供が作る規模と威力じゃないヤバい笑
魅音の指揮も敵の動向を見事に読んだ素晴らしいものです。
部活メンバーが注意を引き付けている間、詩音たちは悟史と富竹救出ミッションへ。
中でてんやわんや、窮地では葛西のスラッグ弾が大活躍。
葛西は"散弾銃の辰"と呼ばれ鹿骨にその人ありと恐れられていたみたいです。
入江も薬物のはったりを利かせて詩音を救ったりしますがメイドインヘヴンのくだりが笑
ついに悟史の前に辿り着く詩音。
しかし末期症状の彼を起こしてはならないと入江に言われてしまいます。
目の前で寝ているのに起こして話すことも出来ず、泣き崩れてしまう詩音。
そんな詩音の前で入江は悟史を連れ帰り治療することを誓います。
かつての両親の件で入江は深い悲しみを知っていますからね…。
富竹の救出も完了、一行は番犬部隊と連絡を取るために興宮へ行くことに。
道中は山狗がバリケードを敷いていますが、突破しなければ時間がかかりすぎます。
その頃裏山では部活メンバーが順調に山狗の数を減らしています。
小此木は彼らを1個機甲師団に匹敵、指揮官も天才級と評価しています。
部活メンバー強すぎる。
羽入も無線を使って山の神様を装いすさまじい迫力の脅しをかけています。
山狗の戦意もどんどん削られていきます。
それでも無茶をさせようとする鷹野。まさに部下を死地に突き落とす背広将校の様相。
診療所襲撃の報を受けた小此木は富竹奪還を悟り、興宮への道の封鎖線へ連絡。
封鎖戦で最後の勝負をかけることに。
赤坂たちの車に向けられるRPG-7。しかし赤坂たちは止まりません。
打たれる直前、射手に弾丸が!詩音の観測の下、葛西が狙撃したのです!
二人のベテランな狙撃援護により、赤坂たちは封鎖戦を突破。
追ってきたワゴン車には富竹が車内から応戦します。
富竹は事故で事務屋に移っただけで、教官時代は不正規戦部隊の射撃教官でした。
ついに完全に突破した赤坂たち。
番犬部隊と連絡を取り、入江機関の即時制圧と山狗への武装解除命令がでます。
そして鷹野と小此木の逮捕命令もでます。複雑な感情の富竹です。
「私達は勝ったんだ…」と赤坂と富竹。
赤坂は梨花ちゃんが待っている、まだ約束を果たし終えていないと、富竹もまだ用事があると言い、「さあ行こう、雛見沢へ」。
といったところで7巻終了!
クライマックスに向けての怒涛のスピード感に圧倒されっぱなしでした。
また、本巻では鷹野の心も描かれていました。
富竹の声を切実に望む鷹野の姿は、何だか悪役には見えない悲壮感がありました…。
いよいよ次の8巻が最後です。
後日談や番外編を除けば『ひぐらし』シリーズの最後です。
一体どんな終わり方をするのか非常に楽しみです。
というわけでいざ8巻へ。
戦力も8割を切った山狗、それでも鷹野は進軍を止めません。
小此木も相手の指揮官の顔を拝むまでは決着がつかないと山を登ります。
そこには隠れずに待ち迎えた部活メンバーの姿が。
梨花捕縛を命じる鷹野を制し、指揮官を尋ねる小此木。
名乗り上げた魅音に、子供だったのかと驚愕すると同時に敬意を表する小此木。
鷹野の命令を無視して武器を捨て、指揮官同士の1対1を望む小此木。
負けは決まったが指揮官ゆえに降伏するわけにはいかない彼なりのけじめ。
我が身を犠牲にしてしか敗軍の将は禊げないのでしょう。
アドバイスをしつつ魅音に体術をかけられる小此木。
戦略、戦術、戦闘の三拍子揃った魅音はSASでもデルタでも最高の人材になれると小此木。
魅音は隊長なんて興味ない、部長でいいと返します。
小此木「英国情報部辺りってとこか、ふ…妥当だな」
魅音「はぁ?だめだめなってないね!」
小此木「ならどこだ!?お前ほどのヤツが何の部長を望むっていうんだ!」
魅音「私がやりたい部長はたったひとつ!雛見沢分校の我が部の部長だけさッ!!」
小此木「な…何…?」
魅音「罰ゲームのない戦いなんてゴメンだね。それに我が部にはどこにも負けない精鋭達がいる。口先の魔術師前原圭一!かぁいいモードの竜宮レナ!トラップ使いの沙都子に、萌え落としの梨花ちゃん!!そして期待の新人古手羽入!!これだけの精鋭が揃ってるんだ!!これと比べりゃ世界のどこへ行こうと退屈だねッ!!」
小此木「勝てねぇ…。こんなヤツが隊長だったんじゃ勝てるわきゃねぇやな…。」
小此木は明るく苦笑して負けを認めます。
次の一撃で殺すから殺しに来いよと、戦いの最後を宣言する小此木。
突っ込む小此木を、触ったようにすら見せずに投げ飛ばす魅音。
そこにちょうど到着する番犬部隊のヘリ。小此木は鷹野を連れてその場を逃走します。
彼らには部活のように負けをチャラにする罰ゲームがないんだねと複雑な魅音。
その場に赤坂も合流し、悟史の無事を伝えられる梨花。
完治していない悟史を沙都子に会わせることはできないが、きっと古江が治してくれる。
梨花(これで私達はやっと昭和58年の夏を越えることが出来る。長い間閉じ込められていた運命の籠の中から抜け出せる。これが私達がずっとずっと待ち焦がれていたハッピーエンド。)
梨花「…ほら、感想を聞かせなさいよ。ねぇ羽入…。」
振り返ると、そこにはなぜか羽入の姿はありませんでした。
その頃、鷹野は小此木を問いただします。
小此木は本当の戦闘部隊である番犬部隊に防諜部隊の山狗は勝てない、富竹は既に奪還されて企ては東京にバレた、我々の負けだと鷹野に伝えます。
現実を受け止められない鷹野に対して小此木はさらに言います。
研究の真偽などどうでもよく、ただ政治的アクションに使えるかしか興味がなかったと。
鷹野のスクラップ張に大勢が賭け、そして負けたと。
鷹野のスクラップ張を足で踏みつける小此木。
1億円も支払ったクライアントの私を裏切るのは許されないと憤る鷹野に残酷な真実を突きつける小此木。
ずっと前から、山狗は東京の野村に買われて鷹野は飼い主ではなくなっていたのです。
野村の暗号名は「郭公」、鷹野の暗号名は「雛」。
郭公はよその鳥の巣に卵を産み付け、孵った郭公は元々の巣の雛を突き落とし乗っ取る。
東京のクライアントも山狗もまだ鷹野に期待している役割があるという小此木。
小此木は拳銃を目の前に落とし、鷹野に自分の頭をぶち抜いてくれと言います。
自殺用の銃は小此木なりの気遣いであり、投降を説得するも頑なに拒否し抵抗、銃撃戦になりやむなく射殺というのが本当の筋書きだそうです。
全て東京の連中が書いたシナリオ通りであり、人生の全てが茶番だったと涙する鷹野。
鷹野は抵抗して山中に逃げていきます。
ヘリに追われ、雨に濡れ、ボロボロになりながら孤独に逃走する鷹野。
拳銃を片手に絶望する鷹野。
鷹野(私は…死ぬしかないんだ…死ぬ事でしか全てを清算出来ない。あの日へ帰れない…。…私にはたくさん罪がある…分かっている…とても償いきれないくらい…。)
鷹野「でもそれは…私が死ななくちゃ償えないの…?嫌…嫌だよお祖父ちゃん…。嫌だ…死にたくない…死にたくないよぉ…。」
そこに現れる羽入。
羽入「人の子よ、数々の試練を潜りそれでもなお神の座を求めるか。」
鷹野「…誰かと思えば…久しぶりね…。あの時境内で宣戦布告をして以来になるわね…。このゲームは私の負けよ、私はもう終わり…。人の身の分際で神に挑戦した哀れな女の末路がこれよ…神の座なんてもう…無理じゃない…。」
羽入「人の子よ、聞け。今こそ神になる道を示そう。」
鷹野「え…。」
羽入「そなたの右手に持つ鉄の火で己が生に別れを告げるがいい。」
鷹野「な…。」
羽入「神の座に肉の器は不要。人にその姿を認められようなどと思ってはならぬ。」
鷹野「これで私の頭を打ち抜けっていうの…。そんな簡単な事で私は神になれるの…?なら今までの私は何だったの?今まで何を積み上げてきたの…?」
羽入「お前は大勢の人間の罪を背負った。大勢の罪を己を生け贄に捧げることで禊ぐのだ。その勇気は讃えられ神の座の末席を許されるであろう。」
鷹野「な…何よ…何よそれ…。私にトカゲの尻尾を引き受けて死ねというの!?そんなの絶対に嫌ッ!!」
羽入「何故に嫌か。遥か以前生け贄として我が娘に討たれたように、人の世に和を求めるためには常に一つの穢れに一つの生け贄がいる。そなたの望む未来に一人の少女を生け贄に求めたのもそれを理解していたからではなかったのか。」
鷹野「な、何の事よわからないわ!私の知らない話はやめて!!」
羽入「…それがわからぬなら所詮は人の身。神の座を求めた身の程知らずを悔いよ。」
鷹野「…悔いるわ…そんな神さまになんかなりたくない…。私は人間でよかった…ただ生きてもいいよって誰かに許してもらいたかっただけなのよ。それなのに何で…こんな事に…。」
羽入「…なればこの度の人の世の穢れを如何にして祓うのか。如何にして代価を祓うのか。」
鷹野「何でよ!何で誰かが責任を取らされなくちゃならないのよ!!お父さんやお母さんやお祖父ちゃんと生きてきた日々にはそんなのなかったもん。みんながみんな幸せだったのに…誰もジョーカーなんか押し付けなかったのに…。どうして私はその世界から零れてしまったの…?」
鷹野「わかってた…うっすらと気付いてた…。何か大切なものを間違えて…でもそれを認めたくなくて、取り返しがつかないところにまできて初めて後悔した。これが私の罪に対する報いなのね…。」
羽入「人の世はそなたに罪の禊を求めるだろう。それが人の世の穢れの祓い方。なれど…我は人にあらず。人の罪を許す存在。人を超える存在にして欠けたる和を埋める存在。田無美代子、そなたを許そう。生け贄を求めて穢れを祓うは人の世の理にあらず。鬼の理なり。その理を断ち切るために我は神の座に座った。それは専念を超える苦痛。…私はこの座を降りたかった。神が和を取り持たなくてもみんなで仲良くやっていける世界を見たかった。そして…千年の時の中で、私はようやくそのカケラを見た。さあ人の子よ。そなたの罪を我が名の下に許そう――。」
手を差し伸べる羽入。
そこに羽入を探して駆けつける仲間たち。
はっ…と我に返った鷹野の前にはいつの間にか巫女服ではなくなり私服の羽入が。
鷹野は拳銃を片手に部活メンバーを脅します。
羽入がせっかく手を差し伸べてくれたのになんて愚かなのか。
魅音を前に出させる鷹野。魅音は部活メンバーを庇い、鷹野に立ちはだかります。
鷹野「あなた達よくゲームはするわよね…トランプのババ抜きはやる?」
魅音「やらないね。うちはジジ抜きばっかだよ。」
鷹野「同じようなルールよ…人の世の罪はトランプのババ抜きと同じ。誰もが1枚のババを互いに押し付けあう。それは一人の敗者と生け贄を決めるゲーム。私はそのババを引いた。そのカードをもう渡す相手がいない。だからその腹いせにあなたを撃つの。不条理な人の世らしくね。」
羽入(勇敢なる魅音、あなたの勇気はそれで十分です。)
羽入「人の世のババ抜きが必ず人に押し付けられなければならないものならば…それを引き受けるのが私の役目。」
羽入が魅音と鷹野な間に割って立ちます。
羽入「梨花、この世界はすごく楽しかったです。私も部活メンバーに加われてよかった。見ているだけじゃなく加わる部活は本当に楽しかった。有り難うもう十分に楽しんだ。神の身には過ぎたくらいに幸せだった。」
梨花「羽入…!」
羽入「先ほど告げたように我はそなたを許す。さぁ撃て人の子よ、人の世の押し付けずには済まぬ罪を放て。それを我が受け止めてやる。」
鷹野「く…くすくす…あんたが…引き受けてくれるっていうの…?そう…わかったわ…わかったわかったわかった。なら…お前が死ねえぇぇぇぇぇぇッ!!!」
凶弾が放たれます。
羽入は拳銃を神通力で止めて見せますが、鷹野の「バケモノ!!」という言葉に動揺して銃弾が神通力の壁を破ってしまいます。
羽入の胸の直前に凶弾が迫り、止まる世界。
圭一(俺達は…俺達はこの光景を知っている…ありえない記憶で知っている。時が止まったこの世界で俺達は身動きが出来ず…あの弾丸を止められない!)
鷹野「くすくすくす。あっはっはっ!あなたは死ぬ、絶対死ぬ!好きなだけ走馬燈をご覧なさい。それが終わったら胸板をブチ抜かれてのたうちまわって死になさい!」
羽入「…そんな事は覚悟の上です。」
羽入(これで…全て丸く収まる。初めてから存在しなかった僕が再び舞台を降り、舞台の上には本来の出演者が全員無事なまま残る。あの時と同じ…桜花にこの身を討たせた時と同じ…。これが最善なんだ…さよなら大好きだった人達…)
そこにスッ…と梨花が近寄り、銃弾を指でつまみます。
羽入「な…どうして…僕ですら動けないのに…人の世の梨花が動けるのですか…」
梨花「それを驚くのはおかしいわ。あんたと学んできたじゃない。みんなが信じれば…みんなが願えば奇跡は起こるって事。」
羽入「…!」
梨花「ここにいる全員が思っている。誰かにこの弾が当たるくらいならその弾をどうか自分にと。そして私はさらにその上を願う。この弾が誰にも当たらない事を。誰にも当たらず誰も傷つかない世界。誰にも当てず鷹野も傷つかない世界。」
ス…と弾を羽入の胸の前から外す梨花。
梨花「私オヤシロさまの生まれ変わりだしね。最後にこの程度の奇跡は使わせて。」
羽入「梨花…」
梨花「鷹野も羽入も人の話を聞かないヤツだって事もわかったわ。魅音の話を聞いてた?私達はババ抜きなんてやらないわ。ジジ抜きしかやらない。ババ抜きは調和の取れた52枚のトランプにジョーカーという不調和を1枚混ぜてそれを押し付けあう。でもジジ抜きは元々調和のとれた52枚の世界から1枚を抜いて余った不調和のカケラを押し付けあう。これは同じようで全然違うゲームなのよ。同じ1枚のカードを押し付けあうゲームだけど押し付けあうものの意味があまりにも違う。ジジ抜きは欠けた1枚のカードが足されたら敗者の出ないゲームになる。その欠けたカードが羽入あなたよ。誰かに罪を押し付けあわなければ終わらぬ世界に羽入という欠けたカードが参加する。そうすればもうこの世界に敗者は出ない。敗者なんかこの世界にいらない。これが古手梨花が奇跡を求めた千年の旅の最後に辿り着いた答えよ。」
羽入「…梨花…」
そう…答えは、魅音の部活の一番最初のゲームにもう込められていたのだ。カードの欠けたトランプでゲームをするから敗者が必ず出るのだ。信じ合い、助け合う事で欠けたカードを補えたなら…それは52枚の完全なるトランプ。敗者の出ない…完成された世界。仲間外れが出ない完成された世界。誰一人輪の外で指をくわえてなくていい誰一人罪を背負い込んで泣かなくていい、全員が手を取り合い罪を赦せる世界。人が生きる以上垢が湧くように罪も湧く。大切なのは罪が湧かせない事じゃない。罪を赦す事なのだ。罪を受け容れよう。そしてみんなで赦そう。それが、古手梨花が見つけて至った完成された世界。それは、一人を敗者にしなくてはならない人の世の罪からの解放。梨花は人の身でありながら、至った。気の遠くなる時間の果てに…ついに至った。
羽入「もしそんな世界があるのなら僕はこの世界にいたい…。」
羽入の手をとったのは梨花にそっくりな巫女服の女の子。
桜花「母上お帰りなさいませ」
動き出す現実世界。弾は消えました。
番犬部隊が駆け付け、鷹野を連行しようとしたところに、富竹が来ます。
富竹「待て!調査部の富竹二尉だ!彼女は調査部が保護する!!」
富竹は彼女の沢山の掻きむしった痕を指摘し雛見沢症候群の高いレベルの発症が疑われると主張します。
富竹「予防薬は100%の効果を保証するものではない。彼女が末期症状だとしたら…今回の事件が彼女の意志に基づくものなのか、末期発症による妄想・錯乱を誰かに利用されたのか慎重に判断する必要がある。全ては…彼女の罪なのか彼女の病んだ病の罪なのか!それはまだ誰にも断言出来ない!」
富竹は落ちていたスクラップ張を拾い、鷹野に差し出します。
富竹「遅くなったね…君を迎えに来たよ」
鷹野「ジロウさん…」
鷹野はスクラップ張を受け取ろうとしますが、涙して手を引っ込めます。
鷹野「…だめ…私いっぱい罪にまみれた…もう生きてはいけない…死ななきゃいけない…じゃなきゃ私は自分の罪の重さで…」
富竹「そうだね…君の罪はひょっとすると軽いものじゃないかもしれない。でも大丈夫。…僕が一緒だから。」
笑顔になり、富竹と抱き合う鷹野。
まさか富竹をかっこいいと思う日が来るなんて!
富竹「一緒に償おう。そして僕と一緒に田無美代子を取り戻そう。それまで僕は決して君の側を離れない。」
鷹野「…わ、私は生きていていいの…?みんなお前が死ねば丸く収まるって私に言うよ…それでもジロウさんは私に生きていてもいいと言うの…?」
富竹「ああ、僕が君を許すよ。だから生きよう。死ぬ事は罪の償いにはならない。生きて償い世界に許しを乞おう。そしてやり直すんだ。そうしたらきっと思い出せる。君が本当はどんな人で…どんな笑顔を浮かべていたかをね…。」
連行される鷹野。
羽入(5時から綿流しのお祭り。もうすぐひぐらしもなきだすだろう。)
羽入「終わったのですね…これで…」
頷く梨花。
羽入(綿流しの日、暑い6月ひぐらしのなく季節…。全て終わったのに僕はまだここにいる…)
羽入「梨花、これで十分です。バケモノと蔑まれかつてこの世を離れた僕の身には十分すぎる…。」
梨花は羽入に先ほどの銃弾を差し出します。
梨花「そう、これは奇跡が起こった事の証。あなたがここにいていい証。」
羽入「…」
梨花「奇跡は本当に起きたの。ひぐらしのなく頃にね。」
羽入「梨花…」
村からは祭囃しのテストがスピーカーで流れています。
お祭りは見るものじゃなくて加わるもの。
二人が来るのを待つ部活メンバー。
梨花「みんなで一緒に行こうね、綿流しのお祭り。」
羽入「うん」
お祭りを楽しむ部活メンバーが描かれています。
以下、羽入によるエピローグです。
思えば彼らはあまりに元気だった。これほどに長い一日を経験してさらに祭りにまで出ようというのだから。でも今日の祭りだけは特別なもの。オヤシロさまの祟りなどという呪いが解かれ、ダム戦争が終わって以来雛見沢が初めて迎える――惨劇なき綿流しの夜。
そう、惨劇なんてなかった――。
村人達は日中に一時電話の普通があったことを知っていたが、気付いたら直っていたので大して気にしなかった。
自衛隊のヘリコプターが裏山の方で騒がしくしていたが噂では訓練の山と間違えて迷い込んでしまったらしい。噂では何と入江診療所にまで降りてきたとか。「頑張れ国防の若者達」と老人達は笑っていた。
村境の路肩には車のものと思われるガラス片が大量に飛び散っていたが、こんな見晴らしのいい道路でも交通事故は起こる。よくある風景だ。
お祭りの開催を知らせる花火が一発余計に聞こえ花火業者達は不思議がったが、「花火が面白そうだったのでオヤシロさまも鳴らしたくなったのですよ」と梨花が言ったらそれで納得してしまった。
今夜は一年に一度のそして最大のお祭り、綿流しの夜。堅苦しい事は抜きにして村人達は今夜を思い切り楽しむのだった。
部活メンバーは相変わらず今年も絶好調だった。どのくらい絶好調だったかと言えば、…まぁ全員本部テントへ連れていかれて村長さんにこってり油を絞られたくらいと言えばわかるだろうか。
村人達にとって見ればいつも通りの綿流しの夜だったろう。でも彼らは知らない。
それを勝ち取るために少女達が気の遠くなるほどの時間、数多の世界で戦っていた事を…。
そうだ、大きな変化があった。
梨花「ボクは夏になったらプールに行きたいのです!」
古手梨花は初めて昭和58年6月以降の予定を立てたのだ。
梨花「6月が過ぎればあっという間に夏が来るのです。夏休みが待ち遠しいのです!プールに行きたいし天体観測もしたいし夏休み中は学校で肝試し大会もやりましょうです!それからそれから…!」
沙都子「梨花朝からはしゃぎすぎですわよ!」
百年を経て初めて得る夏休みなのだから心が躍るのも当たり前。古手梨花の前に広がるのは無限の未来。無限の可能性のある世界から一つしか選べないからこそ輝く、素晴らしい世界。
魅音「この夏は遊っそぶよ~!プールに行って肝だめし大会やってそれからそれから…」
沙都子「梨花と同じ事を言っていますわ」
詩音「お姉は夏休みが終わったら勉強地獄が待っているんです」
圭一「そんな時期からの勉強で間にあうのかよ?」
梨花「魅音は現代の名将なのです。とんでもない方法で志望校に合格してみせそうなのですよ」
詩音「…それが犯罪でない事を祈りたいです」
園崎魅音は最年長者として一足先に進学を迎える。最後の夏休みを満喫すべく遊び倒す予定をぎっしり考えているらしい。
魅音「そうだ圭ちゃん次の部長の件は考えてくれた?おじさんが卒業した後は圭ちゃんに部活の部長を任せたいと思ってるんだからね~?」
圭一「そんなとんでもねーぜ!俺が好きなのは魅音の部活なんだから!」
魅音「ふえっ…?」
そこで止めておけばいいものを魅音の「部活」「部活」と何度も連呼していたら魅音にむくれられた。まあ圭一は鈍感だから圭一なのだ。だから今日も彼を中心に賑やかなのだ。今や彼の名は興宮にも馳せ口先の魔術師はますます絶好調だという。
竜宮レナもまたますます元気になっていく。
圭一「レナ待て誘拐は犯罪だぞ~!」
レナ「はううぅぅぅ羽入ちゃんもおっ持ち帰りいいい!」
圭一「あんなレナでも普段は後輩の面倒見もいいし前よりしっかりしてきたんだよなぁ…」
男の子「クラスのお母さんみたいですよね」
圭一「へへっレナがクラスのお母さんか。じゃあ俺はクラスのお父さんでいくぜ!」
レナ「はぅ…圭一くん恥ずかしいよ…」
沙都子「をっほっほ!お二人とも相変わらずですわねえ!」
梨花「沙都子、今日の部活の後はどうするのですか?勿論裏山へ行きますわ。山狗との裏山戦でトラップをほとんど使い切ってしまいましたもの。更に強化して次は番犬と戦ってみたいですわね!」
ますます元気が止まらなくなっていく沙都子は最近料理の腕がだいぶ上がった。
羽入「沙都子は筋がいいのです。真面目に料理を覚えようとしてくれるのです!」
沙都子「羽入さんのご指導がお上手だからです!」
大好物だった唐揚げで兄を迎えてあげるのが夢のようだった。私だけが知っている。彼女の夢は遠くない内に叶う事を。でも今は沙都子の兄北条悟史に変化はない。変化があったといえば園崎詩音の方か。彼女が休みの度に診療所を訪れるようになったからだ。魅音はそれを怪しげな豊胸手術に加担しているのだと冷やかすが、詩音はにこにこと上機嫌に笑うのみで答えようとはしなかった。
詩音「沙都子~!あなたのねーねーですよ~!」
そしてこれまで以上に沙都子を甘やかすようになり、ことあるごとに沙都子に「ねーねー」と呼ばせようとしているらしい。
入江京介は相変わらず大人の落ち着きとメイドの伝道師の二足のわらじを履いている。実は一度入江診療所が閉鎖になるという話が出た。でも彼を敬愛する村中の人々が嘆願しその話は流れたという。彼は本来村の人間ではなかったかもしれない。でも今は村で最も積極的に貢献する若者の一人として認められている。雛見沢症候群に対しても極めて積極的に研究を進めている。後の話になるが彼は脳が及ぼす影響について先進的な論文を発表し学会を驚かせる。憎むべきは人か罪かを考えさせられるとても意義深いものであった。そしてその論文の引用元には故高野一二三と鷹野三四の名が含まれていたという…。
富竹ジロウは相変わらず季節の度に雛見沢を訪れている。でも以前に比べると村の中で見掛けない。そしてその連れの鷹野三四はあの日以来姿を見せない。どこに行ってしまったのか誰にもわからないが、富竹の表情を見る限り心配はなさそうだった。いつかまたひょっこりと帰ってきて階段をねっちり聞かせて大いに怖がらせるのだろう。
赤坂衛は彼のエピソードがとても笑える。何と奥さんと娘さんが赤坂に内緒で雛見沢に来ており綿流しの祭りの会場で偶然を装って再開したのだ。そこで梨花が「パパ~☆」などと呼ぶものだから…
雪絵「衛さん…どういう事…?まさか…隠し子…?」ギリギリギリ
赤坂「ごごご、誤解だ、雪絵…!!」
でもご家族も雛見沢を気に入ってくれた。梨花と赤坂の娘の美雪もとても仲良くなれたようでまるで姉妹のようだった…。
大石蔵人は一度は醒めた麻雀熱が再発。しかもその卓にどういうわけか園崎茜が加わっているらしい。物騒な組み合わせに雀荘の前に機動隊が出動しそうになったとかならないとか。最近は彼の表情が非常に穏やかになったと署内でも評判だ。長年のわだかまりが解けたからだろう。彼は定年を迎えたら北海道に引っ越す予定だが、夏が来る度に帰って来ようなんて考えている。今や第二の人生は広大に開かれているのだった。
葛西辰由は他の大勢と比べると一番変化がなかった。一部の人間にとって後の人生に対する心構えさえ変えかねない大事件も葛西の中では所詮武勇伝の一つであって、「まぁ上の中くらいの事件でした」というのだから恐ろしい。あと往年の片鱗を覗かせてしまった事を後悔しているらしく、詩音「葛西また凄んでよー!」と言われても、知らぬ存ぜぬで通しているらしい。それも彼らしかった。
最後に私を語っておこう。古手羽入は今日も元気だ。罰ゲーム常連から抜け出しつつあり、かつて前原圭一に与えられていたダークホースの称号は今や羽入に与えられていた。
圭一「素直にひっかかってくれた羽入はどこにいっちまったんだ!?」
魅音「素直だからこそ我が部のルールののみ込みが早いんだよねぇ!」
羽入「逞しく狡猾に!じゃないと部活じゃ生きていけないのです!」
人の世で人として生きる逞しさを部活を通じて今日も学んでいる。
そして今でも思い出す。あの日の事を…。昭和58年6月19日日曜日。この千年で一番長かった一日の夜…。
羽入「あうあう当たらないのです!」
射的ゲームをやった。あんなに当たらないとは思わなかった。
たこ焼きの早食いをやった。たこが入ってないけどおいしかった。
カキ氷の早食いをやった。もっとゆっくり食べればおいしかった。
リンゴ飴を初めて買った…みんなにかじられて穴だらけ。でも美味しかった。
楽しかった。初めて加わるお祭りがこんなに楽しいものだったなんて知らなかった。
圭一「梨花ちゃん頑張れ~!」
沙都子「梨花ちゃましっかり!」
羽入(これまではあの祭壇で奉納演舞を眺めてた。ずっと一人で…。)
圭一「羽入潰されるなよ!」
レナ「羽入ちゃんしっかり梨花ちゃんを応援するよ~!」
羽入(でも今日は違う)
羽入「梨花ぁあぁファイトなのですー!!」
部活メンバー「梨花ちゃーん!頑張れー!」
羽入(みんなに交じってぎゅうぎゅうになりながら見る奉納演舞。それは、私に捧げられてきた千年の演舞の中で一番…嬉しい…)
――夜――
レナ「はい羽入ちゃんの綿だよ。やり方は分かる?」
羽入「わかりますのです。こうしてポンポンしてから流すのですよ。」
私達は罪を沢に流す。それは綿に罪を押し付けて流すという意味ではなく、自分で自分の罪を流して赦すという自らに課す贖罪の方法。そして赦し合い助け合い人の世の世界が築かれていく。罪の洗い流される世界へ続いていく…。ここは全てのカケラが集まった完成された世界。これ以上ない理想の世界。まだこれ以上何をあなたは望む?古手羽入はまだ望む。だって、もっともっと、私達は望んだ数だけ、幸せになれるから。それは遠い未来の事じゃない、ちょっとすぐ先の未来。幸せになれるよ――ひぐらしのなく頃に。
誰だって幸せになる権利がある。難しいのはその享受。
誰だって幸せになる権利がある。難しいのはその履行。
私だって幸せになる権利がある。難しいのはその妥協。
だってこれからもっともっと幸せになるんだもの。これくらいじゃ妥協なんてしないんだから。
私たちは、これまでの幸せを全部取り戻すよ。
私は百年分を。
あなたは千年分を、ね。
Frederica Bernkastel
ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編 完。
ちなみにこの後に、おまけとして、野村作成の入江機関クーデーター事件報告書案と、カケラの海のとある世界のお話「お子様ランチの旗」が。
大人梨花(ベルンカステル?)と話をした田無美代子が、両親と一緒にデパートに。
たまたま電車には何も起こらず、20本目の旗を手に入れた田無美代子。
美代子「電車は怖かったけど、デパートに行って良かったなぁ…。苦労して20本旗を集めたの。20本集めたらきっと幸せになれるって願かけをしたの。きっときっと素敵な幸せが訪れる。素敵な世界が訪れるって」
満面の笑顔の美代子。
大人梨花「いいんじゃない?こういうのも。奇跡に前借りがあったって。」
―――というわけで、『ひぐらし』、読了です!
最後の方は鷹野がひたすらに可哀想なことになっていました。
鷹野の本音が赤裸々に語られて、彼女も彼女なりに苦しんでいたのだなと。
そんな鷹野を赦す羽入の包容力。天使かな?
そして、一緒にやり直そうと鷹野を受け入れた富竹。
鷹野にも救いが与えられたという意味で、真のハッピーエンドと言えましょう。
個人的には、ジジ抜きとババ抜きのたとえの部分が面白かったです。
部活の最初のゲームに『ひぐらし』の世界の"答え"が詰まっていたというのは鳥肌もの。
『ひぐらし』全体を通しての感想は、作者の発想・構成力に畏怖を覚えました。
当初こそは恐怖・凄惨な描写や結末が目立っていました。
しかしそれらを乗り越えた読者だからこそ最後の感動に立ち会えるのだと思います。
梨花と羽入のように、何度も失敗した世界を繰り返してトゥルーエンドに辿り着く。
ある意味で読者と梨花、羽入は同じ立ち位置にいたのだと思います。
ちなみに、ブログの日付を見ると、読みだしたのが2016年の9月でした。
なんと、ちょうど1年をかけて読んでいたわけですね!
以前記事にも書きましたが、『ひぐらし』が世に出て、大ブームを起こしてから長らく時を経ているのに、示し合わせたように友人2人も同時期に読みだしていました。
また、SNSやイベント、動画サイトでもたびたび『ひぐらし』の名前を目にします。
何年経ってもしばしばこの作品が話題に上るのは、この作品が非常に素晴らしいものであるからに他ならないからでしょう。
素晴らしい、というありきたりな表現になってしまいますが、本当に深い作品だと思います!
個人的マンガランキング堂々の1位に入りました笑
ちなみに小説ランキング1位は空の境界、ゲームランキング1位はSTEINS;GATE、アニメランキング1位はコードギアスです笑
今までは『ひぐらし』を薦められる立場でしたが、これからは薦める人になろうと思います!
怖かったり凄惨な描写こそあれど、是非最後の感動を多くの人に味わって頂きたい!
長らくなりましたが、ひとまずこれで『ひぐらし』の感想記事は終了です。
もし読んでいただけた人がいるのならお付き合い感謝いたします。
後日談の「賽殺し編」もいずれ読みたいと思っていますが、また多忙になるので先になりそうです。
もしかしたら「賽殺し編」や「外伝」のプチ感想記事も書くかもしれません。
それでは、ひとまずさようならです!
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